認知行動療法とは-⑧ ~考え方と治療の流れ~【メンタルヘルスの予防的とり組みとしても役立つ】

メンタルケア

こころの病気の概念は、この数十年で大きく変化しています。

たとえば、こころの病気としてもっともよく知られている、うつ病。
以前は、「何をしていてもつらい」「楽しみをいっさい感じられない」という、慢性的なうつ症状を訴える人が中心でした。
しかし現在は、特定の時間帯に抑うつ症状が現れたり、仕事中はうつ状態だけれど、旅行などの趣味は楽しめるといった「非定型うつ病」が急増しています。
とくに、都市部の女性でこのような病態がめだつようになりました。

また、非定型うつ病の前ぶれとして起こることも多い、不安障害の患者さんも増えています。
電車のなかなどの公共の場面で発作を起こす「パニック症(パニック障害)」や、人前で何かをすることに、強い不安や恐怖を感じる「社交不安障害」などは、その代表例です。

こうしたこころの病気の治療には、まず薬を使った治療がおこなわれます。
しかし、薬で一時的に症状を改善できても、再びうつや不安の症状になやまされる人は少なくありません。

そこで現在、こころの病気に有効な治療法として、薬物療法と並んでおこなわれているのが、認知行動療法です。
認知行動療法の最大の特徴は、なんといっても、効果が科学的に実証されていることです。
そのため現在は、もっとも有効な心理療法として、世界的な広がりを見せています。

認知行動療法についての8回目です。
こころの病気や、こころのつらさに悩むすべての人に、少しでもお役立ていただけることを願っています。

尚、当ルームでは、カウンセリングにより認知行動療法が最善であると判断した場合は、同意を頂いた上で、それぞれの方に合ったペースで実施させて頂いております。
お気軽にご相談下さいませ。

【メンタルヘルスの予防的とり組みとしても役立つ】

認知行動療法は、心の病気の治療だけでなく、その予防にも役立つ治療法です。
適応的な認知を身につけることで、ストレスによる不調が起こりにくくなります。

つらい感情を軽くしたいすべての人に役立つ治療法
認知行動療法が考案された当初は、うつ病の患者さんがおもな治療対象でした。

しかしその後の研究で、認知と行動を変えることは、うつ病以外にも有効であるとわかり、現在はパニック症や強迫性障害、社交不安障害、パーソナリティ障害、統合失調症など、あらゆる心の病気に適用されています。

病気の一歩手前のつらい感情も変えられる
認知のゆがみが認められるのは、心の病気と診断された人だけではありません。
誰にでもゆがんだ認知はありますし、それにともなうつらい感情を抱えることもあります。

そのため認知行動療法は、病気未満の心のつらさの改善や、ストレスマネジメントにも役立てることができます。

働く人のストレス管理にも活用できる
とくに仕事の場面では、多くの人が何らかのストレスを抱えているものです。

仕事のストレスにも、認知のゆがみが関係しています。

以下には、その代表的な例を紹介しています。
仕事にまつわる不合理な信念の存在に気づき、それを修正できると、仕事におけるストレスの改善、職場全体のメンタルヘルスの向上にも役立ちます。

【職業別に見られる非適応的認知の例】

職業別のゆがんだ認知の例。
さまざまな職業で、「~でなければならない」という認知のゆがみが存在する。

<教師>
●理想的な児童・生徒像
・児童・生徒は自ら進んで学校活動に参加しなければならない。
・児童・生徒は教師の指示に素直に従うべきだ。

●完璧な教師像
・教師は完璧でなければならない。
・教師はどんな児童・生徒からもきらわれてはならない。

●力量不足
・児童・生徒が問題を起こすのは担任のせいだ。
・親に信頼されないのは教師が無能だからである。

●自己犠牲的傾向
・教師は自分のことよりも児童・生徒のことを優先すべきだ。 など

<看護師>
●患者・家族の理想化
・患者さんは治療上の約束を絶対に守らなければならない。
・患者さんの家族は患者さんが治療に専念できるようにしなければならない。

●看護師イメージの理想化
・看護師は何よりも患者さんのことを優先しなければならない。
・看護師は患者さん・家族にきらわれることなどあってはならない。

●勤務中の感情コントロール
・看護師はつねに落ちついていなければならない。
・看護師はちょっとしたことで腹を立ててはならない。 など

<SE>
●優秀志向
・私は優秀なSEでなくてはならない。
・私は人一倍早く仕事をこなさなければならない。

●自己犠牲
・SEは休日もプロジェクトのために仕事を進めるべきだ。
・SEは体を壊してでも納期は守るべきだ。

●完璧志向
・本番環境でのシステムの不具合は絶対に許されない。
・SEはいつもスケジュールどおりに仕事を進めなければならない。

●理性志向
・SEは感情を表に出すべきではない。

●孤立志向
・私は開発作業中に話しかけられるのはがまんできない。 など

<管理職>
●自己期待
・部下に追い抜かされてはならない。
・人前で失敗するところを見られるべきではない。
・自分の管理部署で問題などあってはならない。

●力量不足
・すべての業務、またはプロジェクトの運営がうまくいかないのは自分の力量がないからだ。
・部下にいうことを聞かせられないのは、自分の力量不足だ。

●勤務中の感情コントロール
・職場は、つねにオープンでなければならない。
・部下は、すべからく向上心をもつべきだ。 など

奈良 心理カウンセリングルーム
ナチュラリー. 鍛治 剛史