解離性障害とはどんな病気か

心の病気

解離性障害の「解離」とは「バラバラになること」で、「分離」とほぼ同じ意味です。
解離するのは「自我」で、たとえば大きな災害に遭い、その危機的な状況に自我が耐えられそうにないとき、防衛手段として解離という方法が選ばれると考えられています。

自我、言い換えれば「私」という意識が解離するということは、その自我を成立させている同一性、記憶、意識、行動、運動、視野や触覚などの感覚が、解離する(損なわれて正常に機能しなくなる)ことを意味しています。

自我がバラバラになることで、危機的な出来事を意識せずにすんだり、注意をほかにそらしたりできますが、症状が深刻になってくると、日常生活に支障をきたすようになります。
このような状態が解離性障害です。

ちなみにこの疾患は、かつては「ヒステリー」と呼ばれていました。
ヒステリーは、ギリシャ語で子宮を意味する「ヒステラ」に由来しています。
その名のとおり、女性に多く見られますが、男性にも出現します。

症状はさまざまですが、おもに次のようなものが挙げられます。

【解離性健忘】
数時間~数日間の記憶が失われます(多くの場合、その期間に心に打撃を受けるような出来事が起こっている)。
本人には記憶を失ったという自覚があります。

【解離性遁走】
自分が誰かという感覚(アイデンティティ)が失われ、家庭や職場から突然失踪します。
長期間失踪して、新たな生活を始める場合もあります。
気持ちは平静で、日常的なことは普通に行えるため、見ず知らずの人の間では障害に気づかれることがありません。

【解離性昏迷】
寝たきり状態が長時間続きます。
話が出来なくなり、音や光などの刺激にも反応しません。
意識障害のようにも見えますが、本人は周囲に起こった出来事を理解・記憶していることがあります。

【解離性運動障害】
手足の運動が損なわれ、奇妙な歩き方をしたり、介助なしに立ったりできなくなります。

【トランスおよび憑依障害】
自分が自分であるという認識を失い、ほかの人格、霊魂、神、「力」にとりつかれたかのように振る舞います。

【多重人格障害】
2つ以上の別個の人格が存在します。
ある人格から、突然、別の人格に入れ替わります。
そのときは、前の人格のときに起こった記憶がありません。
解離性障害のなかでも最も治療が困難とされています。

『病因』
遺伝・体質的な背景…体質的にかかりやすい人もいると推察されるが、よくわかっていない。

心理・社会的な要因おもな原因はストレスと心的外傷と考えられている。幼児期から学童期に強い精神的ストレス(両親の不仲や虐待、いじめなど)を受けていた、あるいは、現在配偶者から暴力を受けている、といった背景が挙げられる。こうした人が、犯罪や災害など、心に大きな傷を負うような出来事や解決が困難なつらい状況、対人関係の深刻な問題などが起こったときに、発症しやすいと考えられている。

脳・神経機能の関与…特にわかっていない。

『治療法』
精神療法が特に重要。必要に応じて薬も併用される。
薬物療法…気分の落ち込みが強い場合は抗うつ薬、不安感が強い場合には抗不安薬を使用することがある。

精神療法…患者によって症状がさまざまなので、それぞれにふさわしい治療方法がとられる。安心できる治療環境を整え、自然経過を見つつ、イメージ法や呼吸法、リラクゼーション法などを用いていくことがある。ストレスを受け入れる、人格を統合するなど、患者の回復に必要な過程をたどれるように手助けする。

<受診の目安>
解離性健忘と解離性運動障害は本人が症状を自覚できていますから、本人も受診に前向きになれるでしょう。
一方、解離性遁走、解離性昏迷、多重人格障害は、本人が症状を自覚できていないため、本人が自ら病院に行くことは期待できません。

かといって、これら解離性の症状は周囲にもなかなか理解してもらえないのが難しいところです。
もし症状に気づいたら、すぐに受診させることが望まれますが、疾病利得(病気になることで患者が得る心理的・社会的・経済的利益のこと)が絡んでいることもあり、詐病(病気と嘘をつくこと)や演技をしているのではないかと疑われることもあります。

<本人や周囲が気をつけること>
最も大切なのは、病気に対する家族や周囲の理解です。
主治医との信頼関係を築き、本人が安心できる環境を整えるよう配慮しましょう。

多くの場合、本人にとっては耐えがたいような出来事が生じ、そのことを忘れたいがためにこの障害が起こっています。
原因の追究は主治医に任せ、家族がこまかく問いただしたりすることは避けましょう。

奈良 心理カウンセリングルーム
ナチュラリー. 鍛治 剛史