万引きの衝動に勝てない/繰り返し盗んでしまう(症状で調べる心の病気-㉓)

症状

周囲から見ておかしいと感じるとき、その症状によっては様々な「心の病気」が疑われます。
放っておくと症状はどんどん悪化し、結果的に治療が長引いてしまう結果にもなりますので、早めの受診が必要です。
症状で調べる心の病気』の23回目です。
皆様に、少しでもお役立て頂けたらと思います。

【万引きの衝動に勝てない/繰り返し盗んでしまう】
万引きが習慣化している場合、万引き自体に興味があるのか、あるいは疾患による問題行動なのかを分けて考える必要があります。

万引き自体に興味のある盗癖では、病的窃盗(窃盗癖、クレプトマニア)が疑われます。
行為に及ぶ直前の緊張感や直後の解放感が忘れられず、金銭や物品目的というよりも快楽を求めて盗みを続けるのが特徴です。

一方、問題行動のひとつとして盗癖が現れる疾患には、うつ病摂食障害発達障害などがあります。
摂食障害(過食・拒食)では、過食嘔吐の目的で食品を万引きすることがあります。
発達障害での盗癖では背景として注意欠如のほか、さまざまな要因が指摘されています。

病的放火、病的窃盗・行為障害・発達障害について、それぞれの詳しい症状としては、以下の様なものがあります。(●…精神症状/〇…身体症状)

<病的放火、病的窃盗>
その瞬間の興奮と満足感を味わうことに依存

『病的放火』
明確な動機もないのに、火をつけてはいけないものや場所に火をつけたり、あるいはつけようと企てたりするものです。
放火の行為自体が喜びとなっていて、常に火のことが頭から離れず、火をつける前には極度の緊張を感じ、火をつけた直後は激しい興奮を覚え、火が回る様子や消火活動、野次馬にも興味を示します。
人によっては性的興奮を覚えることもあります。

『病的窃盗』
窃盗行為をするときの緊張感、成功したときの満足感と解放感を味わうことへの依存による行為です。
その行為に依存しているため、対象となる物品は特に欲しいものとは限りません。
捨てたり、人にあげたり、店に戻しに帰ったりします。

病的窃盗の多くは万引きで、一人で犯行に及びます。
見つかれば、失職、家庭崩壊などを招くこともわかっていますが、衝動をコントロールすることができません。

放火癖や窃盗癖の自覚があるときは、大事に至る前に早めに治療を受けるべきです。
特に放火は、逮捕されると重い刑罰が科せられるだけではなく、死者が出ることもあります。

家族は、警察から連絡があって初めて本人の放火癖や窃盗癖を知ることがほとんどです。
身内が罪を犯した事実にショックを受けても、激情に任せて叱ったり、家庭内で穏便にすませようとしたりせず、すみやかに医療機関に連れていく必要があります。

治療を受けるとともに自助グループに参加し、同じ悩みをもつ人同士で語り合い、回復のイメージをもっていくことも必要です。

家族はコミュニケーションが十分に取れていたか振り返るとともに、本人の気持ちに寄り添う努力をしましょう。

<行為障害>
年齢に見合った社会のルールを守ることができず、取っ組み合いの大げんかをしたり、盗みや放火、動物虐待、繰り返し嘘をつくなど、他者の人権を侵害するような、過激で反社会的な行為を繰り返し行っている状態を行為障害といいます。
原因については遺伝と環境の両方が考えられ、多くは小児期後期から青年期に発症し、男性に多く発症するといわれています。

ちなみに、非社会性パーソナリティ障害は少なくとも18歳以上で、15歳以前に行為障害があることが診断の条件となっています。

行為障害は、①家庭限局性行為障害(非行行為が家庭内に限られている) ②個人行動型(非社会化型)行為障害(友人関係を築くことができず、個人で非行行為を繰り返す)③反抗挑戦性障害(挑発的で反抗的な行動があるものの、社会的規範や法を犯すような行為がない)に分けることができます。

行為障害は、他の精神障害との合併も考えられます。
また、年を経るにつれて症状が複雑化しやすく、子どもも治療に抵抗するようになるので、周囲との摩擦や家庭での困難な事情があって悩んでいるときは、早めに児童相談所や精神保健福祉センター、精神科などに相談しましょう。

治療において、薬で解決できるのは一部の問題をやわらげる程度のことです。
最も大切なのは親の愛情と地域の支援体制です。
専門機関や医療機関と相談しながら、上手に連携して対応していきましょう。

また、子どもの変化を見逃さないように、何でも話せる家庭環境が必要なのはもちろんですが、夫婦間で育て方や価値観に違いがあると、子どもが混乱するので、夫婦間でよく話し合うことも大切です。

<発達障害>
心身の発達に問題がないにもかかわらず、行動や認知の面で、ある特定の領域に問題が見られる障害を発達障害といいます。
たとえば、対人関係が苦手だったり、特定のものへのこだわりが強かったり、極端に不器用だったりします。

発達障害のおもなものとしては自閉症アスペルガー症候群学習障害などがあります。
程度の差はありますが、いくつかの症状が重複して存在することも珍しくありません。
それらの特性は成長過程で明らかになってきます。

発達障害はなぜ起こるのか、その原因ははっきりとは解明されていませんが、遺伝子の異常が関係していることはわかっています。
また、中枢神経系に器質的な障害(組織のどこかが損傷を受ける)があり、それにより認知機能に偏りが生じて、発達障害特有の状態・行動(特性)が現れると考えられています。

発達障害の特徴は幼少期から現れてきます。
現れ方は人によってさまざまで、特徴が強く現れ、幼少期の早いうちに気づく場合がある一方、時には周囲から「少し変わった子だな」などと受け取られる程度で、そのまま成長することもあります。

障害は成長しても残りますが、症状は成長するにつれて軽快していくことも多く見られます。

文部科学省が発表した2012年の調査では、全国の公立小中学校の通常学級には発達障害(自閉症、学習障害、多動性障害=ADHD)のある児童生徒が6.5%在籍している可能性があることがわかりました。
この数字は現在ではさらに増えていると予測されます。

一般に発達障害のある子どもは、その障害の特性から、勉強や友人関係など、学校生活で困難をきたすことが少なくありません。
もし子どもの行動や言動などで気になることがあれば、不登校など二次被害を防ぐためにも、早めの対応が必要です。

保育士や教師にアドバイスをもらったり、専門の医師や臨床心理士に相談するなどして、子どもの特性にあったサポートを受けることが大切です。

心の病気になってしまうということは、誰にでも起こり得ることです。
本人がおかしいと感じること、周りの人がおかしいと感じること、そして周りの人が心の病気を十分に理解し、サポートしていくことが大切です。

奈良 心理カウンセリングルーム
ナチュラリー. 鍛治 剛史

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