⑤摂食障害を活用して成長しよう【自分の身体との有機的なつながりを取り戻す】

心の病気

●「見せる」身体から「感じる」身体へ

摂食障害になる人は、自分の身体を「道具」のように扱ってきたといえます。
自分がどんな人であるかを見せるための「道具」としてです。

ですから、身体が悲鳴を上げても無理なダイエットをしたり、過食嘔吐で身体に過大な負担をかけたりするのです。
摂食障害の極期には、身体の持つ機能といったら、「食べて出す。出せなかったものは脂肪にする」というポイントだけに単純化されてしまいます。
実際には身体はいろいろなサインを出しているのですが、「拒食」「過食」という症状で自分を麻痺させることによって、それらのサインに気づかないようにし、つながりを絶ってしまうのです。

人間の身体は実に精緻につくられているもので、医学的に見ても驚くほどの機能があります。
そんな身体からはいろいろなことを学ぶことができます。

摂食障害の経過で起こったことのすべてが、実はこの精緻な構造の上に成り立っていたということに気づくと、病気や身体の位置づけもまた違ったものになってくるでしょう。
あれほど負担をかけたのに、ちゃんと「飢えへの反応としての過食」を起こし、カロリーが足りなくなれば生理をストップさせ、睡眠を浅くし、とにかく死なないようにという態勢にシフトするのです。

過食嘔吐をしたあとには、気分がとにかく落ち込み、動きたくもなくなります。
これは、過食嘔吐という、身体に大変な負担をかけることをしたあとの休息を提供してくれます。

そして、何といっても、自分自身が言葉で「SOS」を出せなかったときには、病気になってくれました。
摂食障害という病気になったおかげで、さまざまなことを学ぶことができ、周囲との関係も改善することができたのです。
身体には感謝してもしきれないくらいです。

自分の身体を「道具」としてではなく、精緻なものとして尊重できるようになること、それが身体との新しいつき合い方といえるのだと思います。
「どう見えるか」という基準からではなく、「どう感じられるか」という基準から、身体のメンテナンスをしていくことは、新しい一歩になるでしょう。

例えば、自然の中できれいな空気を吸うと身体が喜ぶことを感じ、ヨガで呼吸を意識すると身体にエネルギーがみなぎることを感じられるでしょう。
運動にしても、「どれだけやせられるか」「どれだけ筋肉がつくか」という結果ではなく、そのプロセスを気持ちよいと感じられるようになることが、新しいつき合い方になるでしょう。

これらの新しいつき合い方は、一朝一夕にして身につくものではありません。
これから一生をかけて、少しずつ見つけていくものだと思えば、それもまたゆったりとした楽しみにつながるのではないでしょうか。

●ダイエットの位置づけ

最後に、ダイエットについても一言触れておきたいと思います。

以前にも書いたように、今の日本ではダイエットは流行のようなもので、「ダイエットをしたいと思わなくなること」を摂食障害の治療目標にはしません。
それでも摂食障害は治ります。

そうはいっても、ダイエットと摂食障害はもちろん関係があります。
そして、一度でも摂食障害になった人は、ダイエットには特に注意する必要があります。

例えば、炭水化物をカットするタイプのダイエットなどをすると、必ず反動で「飢えへの反応としての過食」が起こってきます。
これは「過食をしてしまった」という不安や罪悪感を引き起こし、摂食障害の再発にもつながりかねません。

ダイエットについて考える際には、その本来の意味に立ち返ることがわかりやすいでしょう。

ダイエットは本来、「食餌療法(あるいは、そのための規定食)」という意味で用いられた言葉で、健康のためにいかに食べるか、ということがその本質です。
つまり、食を考えることで目指していくのは、やせることではなくて健康になることなのです。
これは、身体との新しいつき合い方の中に位置づけていくことができるでしょう。
身体が持っている精緻な構造(生きていくための安定を保つようにバランスを整える)を自覚した上で、身体が喜ぶものを食べていきたいものです。

摂食障害といえばダイエット、と思うかもしれませんが、この話題を最後に持ってきたことには意味があります。
自分の身体の健康を考えられるようになるためには、ある程度の精神的な健康が必要だからです。
不安で遭難したような気持ちになっている、自分が嫌いで生きる気力もない、というときに、「身体を大切にしましょう」といわれても聞く耳を持てるわけがないからです。
まずは「拒食」と「過食」からいろいろなことを学び、新しい生き方をある程度身につけて初めて、本当の健康について考えられるのではないかと思います。

奈良 心理カウンセリングルーム
ナチュラリー. 鍛治 剛史

心理カウンセリングルーム ナチュラリー. では、「来訪・訪問カウンセリング」、及び、電話・ビデオ通話・メールによる「ネットカウンセリング」と、豊富なメニューを揃えております。
遠方の方におかれましても、どんなお悩みでも、どうぞお気軽にお問い合わせ下さいませ。

●来訪・訪問カウンセリング http://mental-naturally.com/visit/
●ネットカウンセリング   http://mental-naturally.com/internet/