③感情を活用して摂食障害から抜け出そう!【感情を指標にして現状の位置づけをしよう】

心の病気

●感情をそのまま認めるということ

感情の活用法の第一は、現在位置の確認です。
「拒食」は遭難したかのような不安の中で起こると書きましたが、遭難しているときに大切なのは現在位置の確認です。
位置さえ確認できれば、状況はそのままでもずいぶん安心できます。

感情に気づいて現在位置を確認することなど、だれでもやっている当たり前のことだと思うかもしれませんが、実際には、そんなに簡単なことではありません。
「自分ひとりの努力で何とかしなければ」と思っている「拒食」の人や、「自分はだめだ」と思っている「過食」の人は、ネガティブな気持ちをまっすぐに扱うことができないのです。
ネガティブな気持ちは「よくないもの」「未熟な人間である証拠」と考え、自分がそういう気持ちを感じていることすら否認したり、感じていることに気づいても「こんな気持ちは感じるべきではない」と否定したりしてしまうのです。
「拒食」の人にとっては、「感じるべきではない気持ちを感じる自分」も不安をさらに刺激するものです。
不安が高まっている最中に、道しるべがわかるどころか、ますます不安を刺激するようなことが起こる、という構造になってしまうのです。
「過食」の人にとっては、「感じるべきではない気持ちを感じる自分」は、ますますだめな人間ということになってしまいます。
「過食」のエネルギーがさらに供給されることになります。

ですから、感情をまっすぐに見つめ、自分が怒り・罪悪感・不安という気持ちを抱いていることを認め、「ああ、そういう気持ちが出てくるような状況に置かれているんだな」と受け入れることは、とても重要なポイントなのです。
その際、知っておくべきことは、感情には正しい感情も間違った感情もなく、どんな感情であっても、感じた以上は適切だということです。

●人に話を聴いてもらうことの重要性

自分の感情を正当なものとして受け入れる作業は、病気が治ってくれば、そして、あまり強い感情でなければ、自分ひとりでもできるようになります。

しかし、少なくとも摂食障害の人がとても重い時期にその作業をまったくひとりでする、ということは難しいと思います。
どうしても自分を否定するような気持ちが働いてしまって、「こういう気持ちは感じるべきではない」と自分を責めるモードに戻ってしまうからです。

そんなとき役に立つのが、他人に話を聴いてもらうことです。

感情は、安全な人に話して受け入れてもらうと、自分でも受け入れが進むものです。
「それは頭にきて当然だよね」「だれでも心配になるよね」などと聴いてもらうと、自分の感じ方が変ではないということが納得できますし、自分の現在位置の確認がさらに進みます。

人に話を聴いてもらう際には、「話を聴いてくれるだけでいい」と明確にしたほうがよいでしょう。
ここでの目的は、共感的に話を聴いてもらうことだけであって、何かのアドバイスを求めているわけではないからです。
それを明らかにしないと、相手は、「ネガティブな気持ちがなくなるようにしなければ」と思い込み、「いつまでもクヨクヨと悩んでいないで、こんなふうに考えてみたら?」などと、現状を変えるためのアドバイスをしてきたりしてしまいます。
これでは本来の目的である「感情を活用して現在位置を確認する」という目的にとって逆効果になってしまいますので、「今、自分に何が起こっているかを整理してみたいから、ただ話を聴いてくれる?」と目的を明らかにして依頼したほうが安全でしょう。

●感じるしかない気持ちは感じる

現在位置の確認の中には、「今はこれを感じ続けるしかないんだな」というものも含まれます。

例えば、大切な人を亡くしたときには、悲哀の一連のプロセスを進むことになります。
悲しみ、さまざまな後悔、絶望、現実を否定したい気持ち、亡くなった人への怒りなど、一連の感情が出てきます。
これらは、感じることによって先へと進むものであり、必要なプロセスです。
このプロセスにフタをしてしまうと、先に進めなくなってしまい、日常生活が空洞化したり、病気につながったりしてしまうのです。

また、新たな状況に入るときに感じる不安もあります。
もちろん、できる限り不安を感じないように、人に相談したり助けてもらったり、可能な準備をしたりすることには意味がありますが、それでも、最終的に残る不安はあります。
これは、新たな状況に入るというテーマを考えれば、むしろ当たり前のことです。
そういうときは、「今、不安なのは、新たな状況に入るからであって、当たり前のことなんだな」と思えばそれ以上の影響力を持たなくなりますが、「こんなに不安だということは、やはり難しいことなのではないか」と考えてしまうと、その不安に振りまわされることになってしまいます。

感じるしかない感情については、「今はそういう時期だから仕方がないんだな」と受け入れ、せき止めることなく感じていくことがとても大切です。
そして、そのプロセスを大きく助けるのが「人に聴いてもらう」ということです。

感情は、安全な環境で表現すれば、それだけ和らいでいきますので、それを活用しない手はありません。
これは、「拒食」の回復期に感じる恐怖についてもいえることで、専門家の意見や見通しを聞くなど、できるだけのことをしたあとはただ感じるしかないものですから、人に聴いてもらい支えてもらいましょう。

奈良 心理カウンセリングルーム
ナチュラリー. 鍛治 剛史

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