社交不安症について/3.なぜ、恐れてしまうのか【③社交不安になる素質】

心の病気

【おとなしい子は社交不安になりやすい?】

社交不安には、相応の遺伝的素質があると考えられています。

それは、一つには、生まれつき敏感な神経系を持つ赤ちゃんがいることです。

たとえば、アメリカの発達心理学者のトーマスを中心とする研究グループは、乳児においてすでに次のような気質の違いが見られることを報告しています。

・扱いやすい気質……だいたい機嫌がよく、反応が穏やかで環境の変化に慣れやすい。乳児の40%がこれに該当します。
・むすかしい気質……反応が強く、生理的リズムが不規則。10%がこれに該当します。
・おとなしい気質……活動性が低く、環境の変化に慣れにくい子。15%が該当します。

こうした生理的な特性の上に、それぞれの性格が築かれていきます。
このために、むずかしい気質の子や、おとなしい子は、社交不安になりやすいことが推測されます。

性格形成は環境によるという考え方が優勢であった時代に、著名な発達心理学者のケイガンは、たとえば、生後4か月の調査のときに見知らぬ場所や見知らぬ物を怖がった赤ん坊は、1歳でも、2歳でも同じように怖がりであるということから、内気な性格は基本的には遺伝によるものと結論しています。

その後、一卵性双生児を対象にした研究などで、社交恐怖の発症への遺伝的要因の寄与は30%から40%と結論されています。
社交不安に関わると思われる遺伝子も特定されています。

また、脳のどの部位が活性化しているかを調べるfMRIによる研究では、社交恐怖の人は偏桃体が刺激されやすいことが明らかになっています。
偏桃体とは原初的な感情、とりわけ恐怖などに関わる感情を司る脳の部位です。

【生まれつき過敏な子どもは成長するとどうなるか】

生理的な過敏性について研究し、ハイリー・センシティブ・パーソン(HSP)という言葉の生みの親であるアーロンによれば、こうした特質を持って生まれる赤ん坊は全体の15%~20%存在するといいます。

これら過敏な赤ん坊は、ちょっとした味の違いや室温の変化などでぐずりだし、大きな音やまぶしい光にびっくりして泣き出します。
チクチクする服の感触を嫌がります。
少し大きくなると、心の面でも傷つきやすく、心配性であったり、臆病であったりします。
それだけに、子育てには特別に注意深い配慮と手立てが必要だといいます。

こうした過敏性を持って生まれた子は、大きくなっても以下のような特性を持っています。

●物事を深く考えたり、徹底的に処理する
公平や平等など抽象的なことに関しても過敏で、年齢の割に鋭い質問をするとか、大人びたことを言います。
あるいは、いろいろと考えるので行動を起こすのに時間がかかるとか、なかなか決断できなかったりします。
過去のことをいつまでも引きずるようなこともあります。

●刺激を過剰に感受する
このために、精神的負荷が大きくなり心身ともに疲れやすくなります。
旅行やイベントなど、本来楽しいはずの体験もストレスになってしまいます。
集団に参加するとか、人前で発表するなど、刺激の多い場面では尻込みしがちで実力を発揮できず、たとえ発揮できてもひどく疲れてしまいます。

●感情反応が強く、共感力が高い
物事を深く感じ取るので、人の気持ちを読み取る力や、共感する能力が高い。また、強い感情が喚起され、心が動揺しがちです。

●ささいな刺激を察知する
これは感覚器の敏感さというよりも、思考や感情のレベルが高いことに起因します。
たとえば、会話のちょっとしたニュアンスや声のトーン、目の動きなどに敏感に意味を感じ取ります。
この能力は有利に機能することもありますが、刺激の過剰負荷をもたらしたり、相手の心を読みすぎ、配慮しすぎるなど、不利に働くことが少なくありません。
こうした繊細さのために、集団活動が苦手で、友達との関係にも困難を抱えがちです。

社交不安に苦しんでいる人には、これらの特徴はまさに自分のことだ、と思い当たるのではないでしょうか。

【育て方によって、内気な子も内気でなくなる】

このように社交不安が遺伝的基礎を持つことが明らかにされていますが、養育の影響も無視できません。

たとえば、ケイガンは、幼児期に調査した子どもたちをその後も追跡調査しています。
それによると、生後2か月で内気だった幼児のうち、4年後にはその3分の1は内気ではなくなっていました。
その内気でなくなった子どもを調べてみると、とくに母親の接し方が関係していることがわかりました。
これらの母親は、少しずつ外界に慣れるように子どもを導いていたのです。

親は内気な子どもを保護しがちですが、それだけではいけないので、母親は子どもの安全基地になるとともに、母港ともなって、子どもを外界へと導いてあげることが必要なのです。

さらに、こうした子どもたちが20代になってからの調査では、内気なままにとどまっていたのは3分の1ほどでした。
つまり、内気な幼児のうちの3分の2は、内気な青年ではありませんでした

ところが、彼らの脳をfMRIで調べたところ、偏桃体が過敏に反応する傾向は残っていました。
このことから、彼らは生理的には内気な性質のままなのですが、脳の対処法が変わることで内気さを克服したのだと考えられています。

【環境が社交不安の形成に及ぼす影響】

親の養育のみでなく、私たちが育つ環境が、社交不安の形成に影響を与えています

たとえば、兄弟の少なさや、子ども同士の交流の希薄さなどによって、交わり体験が乏しくなっています。
そのために、感情をぶつけ合いながら交流することで育つ社会的能力や、傷つきに対する免疫力が弱くなっているのです。

幼いときから競争的環境に置かれることも影響しています。
競争により周囲の人は心通わす友ではなく、競り合う相手となってしまいます。
そのために、つねに優劣を意識させられ、自我を脅かす存在となっているのです。

さらに、我が国独特の文化的風土の影響があります。
その一つは、完璧主義的傾向です。
日本に来た外国人は、電車が1分の遅れもなく運行されることに驚きます。
英語の授業でも、「とにかく通じる」ことを重視するのではなく、「文法的に正しい」英語が求められます。
「間違いだらけの〇〇〇」といった類の図書が、無数に出版されています。
こうした文化的風土が、間違うことを過度に恥じるという社交不安につながっていきます。

そのうえ、現在の社会状況が社交不安を強める作用をしています。
グローバル化の中で、生き残りのために企業は若手を育てる余裕がなく、彼らは性急に一人前の仕事が求められます。
ベテラン社員もまた、失敗が許されない切迫感のもとで仕事をしています。

奈良 心理カウンセリングルーム
ナチュラリー. 鍛治 剛史

心理カウンセリングルーム ナチュラリー. では、「来訪・訪問カウンセリング」、及び、電話・ビデオ通話・メールによる「ネットカウンセリング」と、豊富なメニューを揃えております。
遠方の方におかれましても、どんなお悩みでも、どうぞお気軽にお問い合わせ下さいませ。

●来訪・訪問カウンセリング http://mental-naturally.com/visit/
●ネットカウンセリング   http://mental-naturally.com/internet/