内部感覚エクスポージャー【パニック障害の精神療法-5】

パニック障害

【こわいのは発作ではなく、呼吸困難などの内部感覚】

内部感覚エクスポージャーの「内部感覚」とは、パニック発作で起こる身体的な内部感覚(動悸、めまい、吐き気、呼吸困難など)です。
この内部感覚にあえて自分をさらし、それにしだいに慣れていき、最終的には発作を「こわがらなくする」ことが、この療法の目標です。

内部感覚エクスポージャーでは、パニック障害という病気の本質は、パニック発作そのものではないと考えます。
もちろん患者さんは発作をおそれますが、実際におそれているのは、発作によってわき起こってくる内部感覚なのです。

その感覚を、みずからつくり出して体験するのが内部感覚エクスポージャーです。
薬やリラクゼーション、自律訓練法などで不安や発作を抑えるやり方とはまったく逆の療法で、つまり、意図的に発作を起こし、その発作に慣れるようにすることを目的としているのが、内部感覚エクスポージャーなのです。

決して楽な方法ではありませんが、不快な身体感覚を自分でコントロールする力が身につき、再発なども起こりにくくなります。

この療法では、発作の苦しみを避けるための薬などは、あえて用意しません。
みずから積極的に発作を経験することがポイントですから、はじめるにあたっては、患者さんにも心がまえが必要です。

薬を断ちますので、離脱症状(禁断症状)があらわれます。
発作も起こります。
そういったことを気にしないで生活できるか、治したいという気持ちにかわりはないか、それをみずから確認することが大切なのです。

このような心がまえは、パニック障害の患者さんにとってはつらいことに思えます。
しかし、実は、うつ病の人にも同じような不安発作はよく起こります。
ただし、うつ病の人は発作が起こっても、救急車を呼んだり、薬を飲んだりはしません。
発作が起きても、あわてたりせず、そのままにしています。
いずれ発作はおさまることがわかっているからです。

発作が起こること自体は異常ではなく、発作をこわがり、発作が起こらないように予防線をはることが問題になる(回復を遅くする)……これが、内部感覚エクスポージャーの考え方なのです。

【みずから症状を起こし、恐怖への抵抗力をつける】

内部感覚エクスポージャーでは、薬からの離脱症状や、薬をやめることであらわれる不安症状なども、エクスポージャー(曝露)の一つと考えます。
そのため、薬を計画的に減らしていって中止し、離脱状態のピークで治療プログラムに入ることがあります。
症状の悪化もありますので、医師の指示を守ることが大切です。

治療プログラムでは、まずパニック障害への理解を深め、自分の発作を客観的に見るための学習をしてから、発作を経験するメニューに入ります。

発作をみずから起こす方法は、イスの上で体を回転させる、過呼吸をしたり息を止める、コーヒー(カフェイン)を飲む、息切れするほど激しい運動をする、おなかが苦しくなるまで食べる、などを専門家の指導のもとで実施します。

いずれも交感神経が興奮する方法で、患者さんにはパニック発作が起こったときと同じ身体感覚が起こります。

その後は、対処法を練習します。
自律訓練法や筋肉弛緩法などのリラクゼーションで、発作による不快感を軽くします。

通常は、1回2~3時間のセッションを2~3回くり返してコースは終わりますが、身につけたエクスポージャー法は、自宅でもくり返し練習するようにします。

こうして恐怖への抵抗力をつけておくと、はじめての場所やはじめての経験で恐怖の感覚が呼びさまされたときも、あわてず対処できるようになります。

★Point
●パニック障害の本質は、発作そのものではなく、発作への恐怖心
●恐怖心を克服するために、あえてみずから症状を起こし体験する
●不快な身体感覚を自分でコントロールする力が身につく

奈良 心理カウンセリングルーム
ナチュラリー. 鍛治 剛史

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