【パニック障害の経過-④】依存症など、さまざまな病気を併発する

パニック障害

ケース⑤
不安を酒でまぎらせ依存症に

最初の発作が起こったのは夕方でした。
Sさん(36歳・主婦)は、混んだスーパーのレジに並んでいました。

人いきれで息が詰まり、胸がムカムカして吐きそうになりました。
さらに、急激にめまいが起こり、その場にうずくまってしまいました。

店員に事務所のソファで休ませてもらううちに、少しおさまってきたので、何とか家に戻れました。

帰宅の遅い夫を待たず、2人の娘と夕飯の食卓に向かいましたが、Sさんは食欲がありません。
ふとサイドボードの夫が飲み残したワインが目に入りました。

気分がよくなるかもしれないと、Sさんは、そのワインを一気に飲みました。
スーッと胸のむかつきがとれ、気持ちが高揚しました。

Sさんは、この快感が忘れられなくなりました。

不安感が強くなったり、発作が起こりそうになると、お酒を飲みました。
すると、気分が晴れました。
だんだん酒量がふえ、家事も手がつかなくなり、ついには朝から飲むようになりました。

ある日、家の中が乱れ、いつもぷんぷんお酒の匂いをさせるようになったSさんを心配して、早目に帰ってきた夫が目にしたのは、床に倒れている妻の姿でした。

顔に冷や汗をかき、手足がふるえて立ち上がることもできないSさんは、夫にともなわれて病院を受診。
医師から、パニック障害にアルコール依存症を併発している状態だと診断されました。

【アルコール依存症やほかの不安症の併発】

パニック障害は、ほかの精神疾患を併発すると、経過が複雑になり、回復も遅くなります。
うつ病についてはすでに述べましたが、次のような病気もよく併発します。

●アルコール依存症
アルコール依存症は、パニック障害と併発する率が非常に高い病気です。
パニック障害になる前からアルコール依存症がある人や、このケースのSさんのように、ほぼ同時に発症する人もいますが、多いのは、パニック障害が進み、不安や恐怖をお酒でまぎらせているうちに依存症になってしまうケースです。

アルコールには、一時的にパニック発作を防いだり、不安や恐怖をやわらげる作用があるため、パニック障害の人はしばしば飲酒に走ります。
しかし、アルコールの抗不安作用は長つづきしないため、際限なく飲んで、酒量が増えてしまうのです。

特に、女性は体質的になりやすい素因があり、男性より2倍早くアルコール依存症になるといわれます。

大量の飲酒は治療薬を効きにくくし、パニック障害をますます悪化させます。
本人がかくれて飲んでいる場合もありますので、周囲の人は気を配ることが大切です。

●ほかの不安症
パニック障害は不安症の代表的な病気ですが、同じ不安気質が根底にあるために、ほかの不安症も併発しやすいのです。
特に多いのが、「限局性恐怖症」や「社交不安症」です。

限局性恐怖症は、動物や虫、高所、血、雷など、特定の対象を異常なまでにおそれる恐怖症です。
パニック障害になる前から持っている人が多く、パニック障害に併発する割合は75%という米国の調査もあります。

また、社交不安症(対人恐怖症)は、他人からの評価を過剰に気にして、自分が否定されたり、きらわれたり、恥をかかされることを強くおそれます。
もっともよく見られるのは、人前で話すことを極度にこわがる「スピーチ恐怖」です。

限局性恐怖症も社交不安症も、どちらもパニック発作をともなうため、発作がパニック障害によるものなのか、これらの不安症によるものなのか、見きわめる必要があります。

複数の不安症を併発すると、生活はさらに困難になりますので、症状を見逃さず、適切に治療することが大切です。

★Point
●アルコールは不安や恐怖をやわらげるため、依存症になりやすい
●同じ不安気質が根底にあるため、ほかの不安症の病気を併発しやすい
●ほかの病気の併発は、パニック障害の回復を遅らせるので見過ごさない

奈良 心理カウンセリングルーム
ナチュラリー. 鍛治 剛史

コメント