【パニック障害の経過-②】広場恐怖症…不安が行動を制限する

パニック障害

ケース③
発作の記憶で電車に乗れなくなる

Sさん(27歳・会社員)に最初の発作が起こったのは電車の中でした。
突然強い不安感におそわれ、心臓が破裂しそうで、呼吸が苦しくなり、息も絶え絶えになりながら次の駅で降りました。

以降、このときの記憶がSさんを苦しめました。
特に、発作がはじまったときに、向かいの席にすわっていた人たちが驚いたように自分を見ていた、その視線を思い出すと、気分が悪くなりました。

それでも、当時のSさんは就職活動をしていたので、毎日出かけなければなりません。
電車に乗るのがこわくなったSさんは、近所の内科診療所を受診。
自律神経失調症と診断され、薬が処方されました。
しかし効果が感じられず、ほとんど飲みませんでした。

その後、Sさんは就職しましたが、突然の発作症状はつづきました。
外出はできましたが、電車やバスには不安があり、付き添いがあれば何とか乗れるという感じでした。
しかし、不安感のために途中下車することもありました。

結局、最初の発作から2年半後に、総合病院の神経科を受診。
パニック障害と診断され、本格的な治療がはじまりました。
Sさんは、抗不安薬でパニック発作がコントロールできるようになり、行動療法にも取り組んで、決まった路線のバスであれば1人で乗車できるようになりました。
しかし、電車にはいまだに付き添いがないと乗れません。
発作時の電車内でのことを思い出し、強い不安感にかられるのです。

【不安な場所を避け、生活に支障が出る「広場恐怖症」】

パニック発作は、ふつうは時間も場所も選ばず、突然に起こります。

しかし、予期不安が強くなると、本人は、発作のおそろしい経験と、それが起こった場所や状況を強く結びつけて考えるようになり、そのような場所や状況を避けるようになります。

この回避行動が、しだいに「広場恐怖症」になっていきます。
「広場」とは、広い場所をさすのではなく、発作が起きても「逃げられない場所」や「助けを求められない場所」のことで、そのような場所や状況に身を置くことに恐怖を感じ、忌避・逃避行動を取るのが広場恐怖症です。

恐怖の対象になるのは、人によってさまざまですが、交通機関(飛行機、高速道路、新幹線、特急電車など)、知らない人に囲まれる場所(エレベーター、人込み、長い行列など)が多いようです。

恐怖の対象が広がると、行動範囲がせばまったり、1人では外出できなくなるなど、日常生活に支障が出ます。
さらには、家から一歩も出られなくなるほど重症になる場合もあります。

パニック障害では、80%以上の人が多かれ少なかれ広場恐怖症を持つといわれますが、重症(高度)な人ほど病気の経過が長くなる傾向があります。
それでも、薬物療法と行動療法をしっかり行うことで、見違えるほど行動範囲が広くなる人もいます、

人との接触を避ける対人恐怖

広場恐怖症の、逃げられない状況や助けてもらえない状況への恐怖は、対人関係への不安や心配ともかかわりがあります。

パニック発作によって、人前で恥ずかしい思いをするのではないか、見ず知らずの他人に迷惑をかけるのではないか、といったことが恐怖の対象になってしまうのです。
それが高じると、人との接触を避けるようになります。
これが「二次的対人恐怖社交不安障害)」で、パニック障害の患者さんの約3分の1にあらわれるといわれます。

■広場恐怖症のレベル
●軽度
外出に不安があるが、どうしても必要な場所だけは1人で行ける。

●中等度
1人での外出が困難で、行動が制限される。
付き添いがあると行くことができる。

●高度
ほとんど家から出られず、引きこもるようになる。

★Point
●予期不安が強くなり、発作が起こった場所や状況を避けるようになる
●忌避行動が強まると、1人での外出がむずかしくなる
●高度な広場恐怖症では、家から出られなくなることもある

奈良 心理カウンセリングルーム
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